vol2 オズごっこ
夕暮れ迫る田舎の道。いつまでもこないバス。あたりはだんだんと暗くなっていきます。 家まではここから90分はかかるのですが、時計をみるとあと30分も待たなければならないようです。 早く家に帰って夕食を作らなきゃという思いが募ります。 私はこんなふうに気持ちが切羽詰まってきたときにオズごっこをはじめます。 ここがオズの国でなにがおきても不思議じゃないとして ドロシーだったらどうするのだろうかと思うのです。 私の目の前を何台もの車が通り過ぎていきます。そこでかかしのようにひらめきました。 駅まで乗せてもらえるようヒッチハイクの看板をだしてみよう! その日の私はたまたまマジックとノートを持ち合わせていたのでした。 しかし小心者の私はこわいおじさんの車だったらどうしよう? ヤンキーだったらどうしよう? と想像してこわくなりました。 しかし冒険を楽しむことにした私は心の命じるままに「小室駅」と書いてみました。 字が細いようです。文字をなぞって太くしました。 そしていよいよノートをかざそうと顔を持ち上げるとヘッドライトをつけたバスがやってきました。 ホッとして乗りこむと同時に当たり前の結末にちょっぴりがっかりしました。 そしてバスの中でさっき想像していたことを思い出して笑いました。 今日もおいしい夕飯を作ってあげられそうです。 オズっておもしろい。