vol5 親切ってどういうこと?

ニック(=ブリキの木樵り)はドロシーやかかしや臆病ライオンにくらべると活躍回数が少ないように感じる。 それからハートのなかでも「親切でなくてはね」 (vol3 親切なハート 参照)っていうのもあまりピンとこない。親切ってどういうことなんだろう。
ああ、ニックが分からない。

私は手芸が好きだ。そのとき使う裁縫道具の中で「この縫い針、親切だな。」と感じるときがある。針先が巧妙に出来ていて 布の目をかいくぐってするりと糸を案内してくれる。
針先というものがとても巧妙だと知ったのは皮を縫ったときである。皮専用の針は針先が刃のように鋭く皮を切りひらきながら縫うように作られているのだそうだ。 ほかの縫い針であっても、縫いやすい針と縫いづらい針の差はこの針先によるものだとわかった。

スルリと糸を案内する針は親切だ。 縫っているときにぴったりと私の気持ちに寄りそってくる。手を動かす私のそばに静かに静かにいてくれる。 スルリと糸を案内する親切な針を使ってできあがったものたちはあとあとまで長くつき合うことになる。 出来上がったものがぴたりと私の気持ちに寄り添って喜びを与えてくれるからだ。
人間同士の関係でもこの感覚があったら気持ちがいいだろうと思う。

ところが人間には思惑という心がある。親切にすると気持ちがいいとか、やってあげたなどなど自己満足の 感情をもらいたいと先に思ってしまうのだ。

親切は思惑なしで相手に付き合うことだと思う。
親切を第一信条としたら、思惑の入る余地はない。 人から何かを与えてもらおうとしないし、何かを与えようともしないのではないだろうか。
ただただその場に寄り添う。

そして寄り添っているときに何か感情が湧きあがってくるかもしれない。喜び、安堵、驚き etc……。 しかしどんなに湧きあがってこようと親切が第一の信条ならばそれは "おまけ" みたいなものにすぎない。

ニックは洒落のわかる男だな。まじめなのかと思っていたよ。 そういえば自身の体をいつもピカピカにするお洒落なヤツだったけ。全身全霊で洒落のわかるやつだ。
オズっておもしろい。

Happy end をあなたに

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